病気・症例情報

急激な吐き気と食欲不振を起こしたセキセイインコちゃんを診察しました。

来院時はそ嚢が通常より拡張して垂れ、そ嚢内に液体と餌が溜まり 舌が蒼白で口から泡を吹いている状態でした。
酸素吸入後に何とかレントゲンを撮影でき 金属は確認されませんでしたが肺炎像と胃拡張があり、メガバクテリアの治療歴があることと、そ嚢に液体が充満していることから、まずは胃酸を抑え消化管を動かす薬と肺炎の治療を行いました。

翌日そ嚢の中の液体が減って安全に保定できるようになったところで そ嚢の底に柔らかい異物が触診されました。
そ嚢液を顕微鏡で観察すると紙のような繊維が観察されたため 何らかの繊維がそ嚢に溜まり、そ嚢から胃へ続く食道の入り口を塞いでいるものと思われました。

異物の固さと量から 特殊な器具を口から入れて摘出できると判断し、軽い鎮静下で行うことにしました。
舌の色が白く呼吸状態も悪かったことから酸素吸入をしばらく行い、万が一に備えて吸引器や止血薬、蘇生薬、気管挿管なども全て準備した上で 酸素吸入しながら処置を行いました。

まず潤滑剤をつけた細い食道ゾンデを挿入し そ嚢内に残っていた液体をできるだけ除去しました。潤滑剤は食道内の滑りを良くして異物を引き出しやすくするのが目的ですが、場合によっては使用しません。
次に 潤滑剤をつけた耳道用異物摘出用器具をそ嚢内に挿入し 異物の上部を軽く掴んで引き出しました。引き出す際に深く掴んでしまうと異物が折れ曲がり食道に詰まる危険が増しますので 上部を軽くつまむようにしています。また 助手はサクションをオンにして、私が異物を口から引き出す際、液体を誤嚥しないように横から液体を吸引しました。

出てきた異物はティッシュペーパーの塊に他の繊維が混ざったもの[画像]で 引き出した時の長さは28mm、幅は9mmもありました。飼い主さんに確認したところ ティッシュを食べるのは気づいていたので注意していたが、気づかないうちに少しずつ食べていたかもしれないということでした。

このように、そ嚢内の異物が少量で柔らかい場合は口から引き出す処置が可能な事も有り 今までセキセインコで3例行い全て成功しています。
しかし 処置中に吐いて誤嚥したり、引き出す途中で食道に詰まってしまったり 口腔を傷つける危険も常にあり、状況によっては即死も想定されるため非常な緊張感を持って行っています。危険性については飼主様に説明の上、ご決断を頂いています。内科的な治療で改善しない場合にこのような処置が必要になります。

小鳥は何でも口にして 飲み込んでしまうことがあります。
繊維の誤食の例としては 新聞紙、段ボール、服の毛玉、鳥用ベッド、本の背表紙、じゅうたんやラグ、フェルト、飼い主さんの髪の毛など。
ティッシュペーパーのような柔らかい紙でも今回のように詰まってしまう事がありますので 放鳥中は目を離さず、紙や布、服の毛玉、髪の毛なども食べさせないようにしましょう。
誤食している場合はそ嚢液や検便で発見できる事もあるので 定期健診を受けて確認しておくと良いと思います。ただし便に出ておらずわからないこともあるので、基本的には飼い主様の普段の観察が大切です。
健診で繊維を指摘された場合は生活環境の点検と改善をお願いします。

小鳥担当の副院長よりお知らせです。

世界中の鳥の獣医師が参加している学会「米国鳥類獣医師協会(AAV)」に参加していますが
この度 RACE認定2024年度の教育セミナー全21クラスを受講し 受講後のテストに合格し修了証を頂きました。
病気の治療だけでなく 貴重な野生のオウムの保護活動や、米国での保護後有償譲渡にかかる免許制度の改正など様々な新しい知識を学びました。

その中で ある種の小型インコに起きる 食餌関連かもしれない異常が言及されました。
学術的に病態が明らかにされていないため絶対とは言えないのですが 今までの常識が変わる可能性があるためHPでお知らせすることにしました。
それは

① マメルリハ、セキセイインコ、コザクラインコ、オカメインコ色変わり品種(ノーマル以外の色)において
② 実際に食べている餌全体のうち ペレットが90%以上を占める場合
③ 原因不明の尿細管障害が認められることがある。

ということです。

腎臓の組織検査で確認されているだけで詳しい原因は分からないそうですが
ペレット90% 以上給餌の上記の鳥種において 早期の尿細管障害ならペレットの量を60%以下にすると組織学的な異常が改善するが
しなければ進行すると言及されていました。但し どの程度の数値なら改善するかは示されませんでした(Avian Renal System:Anatomy to Clinical Perspectives)。

つまり、講師らの経験上は 上記の色変わり鳥種にはペレットは実食全体の60%以下にした方が良い ということになります。

ペレットの給餌割合について当院ではオウム・インコについてはハリソン博士の方針に従い全体の80%を理想としてきましたが
該当鳥種については 成長期や繁殖期・換羽期などの短期間を除き
60%以下を今後は推奨していきます。

言及されなかった鳥種についてはわかりませんし、今回の内容についても将来的に覆される可能性はあります。
論文化もされていませんので 今まで当院で飼育指導をさせて頂いた皆様に こちらよりご報告させて頂きます。

胃が弱いなどの理由で ペレットまたは流動食を与えている鳥さんには
小さい種類のシードの消化を良くするためふやかす方法や 植物性たんぱく質が摂れる豆製品に慣らす方法などを診察時にお話ししております。

画面右下の当院インスタグラムやフェイスブックでもご紹介していますのでご覧下さい。

最後に、今回ご紹介した内容は米国鳥類獣医師協会全体の声明ではありませんので
病気の治療のために完全ペレット食や流動食にしている場合は主治医の先生にご相談になってみて下さい。

画像はセミナーの修了証です。

2025.1.29

若いセキセイインコの女の子がご自宅のエアコンの吹き出し口に入り 
ファンに巻き込まれる事故
が発生しました。

一時は生命が危ぶまれましたが、入院治療で元気になってくれました。

飼い主様は 事故の可能性に気づいていたらエアコンに対策したのにと仰っていました。

もしも目の前で小鳥がエアコンに飛び込もうとしているのに気付いたとしても 
とっさに止めることは難しいので エアコン内部に入れないように工夫する必要があります。

一例として 市販のプラスチック製ネットでエアコンカバーを作りましたのでご紹介させて頂きます。

セキセイインコの頭が入らない網目サイズは13mm以下です。

そこで、10mmピッチのトリカルネットをハサミで切って エアコンより少し大きめに結束バンドで成形し、石膏ボード用フックで壁に数カ所引っけて固定しました。

トリカルネットは軽くて柔らかいので扱いやすかったですが、作業は高所になり なかなか危なかったです。
作り始めてから取り付け完了まで2時間かかり、脚立に上ったり下りたりしているうちにふらっと来ました。
作業中はエアコンをつけられないので、気温が上がってくる前に対策した方が良さそうです

トリカルネットの耐用年数は黒で5年だそうです。傷んできたら作り替えたいと思います。

最後に、小型鳥でもネットを噛み切って食べてしまう可能性がありますので 使用の際は十分ご注意下さい。

ちょうど良いサイズと色のトリカルネットを探すのに苦労したため 当院の楽天ROOMに掲載しました。ご参考になれば幸いです。

https://room.rakuten.co.jp/nanohanavet/1700198092184102

2023.3.16

【鳥】セキセイインコちゃんの副鼻腔炎

副鼻腔炎から目の下に膿瘍が出来たセキセイインコちゃん。
初診時に肥満だったため、ダイエットしながら洞内注射や洗浄を行いました。
しかし症状が悪化していったのと ダイエットが成功し麻酔のリスクが下がったので 全身麻酔をかけて膿瘍を切開し 摘出した膿を培養検査やPCR検査に提出しました。その結果アスペルギルス属の真菌が検出されました。

切開部位は縫合せず、抗真菌剤入りの洗浄液で毎日お家で洗浄してもらいながら通院と内服を続けたところ、一か月後には腫れが完全に無くなりました【写真右下】。

それからもしばらく内服や洗浄で通院して頂き治療終了し、生活環境に注意して頂きながら1年が経ちましたが再発していません。

鳥の副鼻腔は嘴の根元から目の後ろ側まで迷路状に通じており一度炎症を起こすとなかなか治りにくいのですが、この子は膿瘍が限局的だったようで、時間はかかりましたが外科的な治療が奏功しました。
切開後にお家でしっかり洗浄や投薬をして下さった飼い主様のお力も大きかったです。
この子は治療後も人の事が大好きなままで、飼い主様との普段からの信頼関係が 治療を後押ししてくれました。

副鼻腔炎の予防は、ビタミンやミネラルを適切に与えたうえで生の野菜も与えたり、窓ガラスを開けて日光浴をさせたり、毎日掃除したケージで換気を良くして飼育することです。また過度な発情や産卵は高脂血症やストレスから色々な病気を起こしやすくします。

生活環境を工夫して 病気を予防してあげましょう。

猛暑の毎日ですが 皆様いかがお過ごしでしょうか。
今日は 昨年導入した最新のレーザー治療の成果についてご紹介させて頂きます。

このレーザー治療器は 肩こりや腰痛軽減、皮膚の再生促進、そして腫瘍細胞の分裂を抑える治療まで、幅広い治療が可能な最新のモデルです。

今日来てくれたのは、腫瘍を縮めるために通って頂いているミニチュアダックスのシオンくん。
8ヵ月前から、目の上の腫瘤にレーザー治療をしています。
シオンくんには持病があり 麻酔をかけるリスクが高いため、手術ができません。
でもレーザー治療を続けて頂いた結果 腫瘤は非常に小さくなり 飼い主様に大変喜んで頂いています。
ただ根っこ部分がまだ正常化していないので 定期健診を兼ねてレーザー治療を続けて頂いています。

その他にも、ワンちゃんやネコちゃんの口内炎の痛みが軽減されたり、鳥さんの腫瘤がきれいに取れたり
皮膚の傷の治りが早くなり 非常に効果がある治療だと実感しています。
このレーザー治療は小さな動物さんも気持ちが良いようで大人しく受けてくれますので 麻酔をかけることはありません。
時間は1回5~10分で、費用は2000~2500円です。

残念ながら 腫瘍の種類によっては効果が低い場合があります(肥満細胞腫・扁平上皮癌・羽包上皮腫など)。
レーザーだけでなく 他の治療と組み合わせる事も多いです。
でも この治療器にしかできない効果が出ることも多いですので、動物さん、鳥さんでお困りの症状がありましたら 是非一度ご相談下さいね。

※2019/8/11~15は休診させて頂きます。

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