一般的に入手可能なヒナ用フードのうち 非常に消化が良いケイティーエグザクトの袋に書いてある説明文を和訳しました。作り方だけでなく食滞を起こさないための注意点なども書かれています。
文中の※は訳注で、経験上当院でご説明している内容です。お急ぎの方は一番最後にまとめがあります。
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ケイティーエグザクト ハンドフィーディングフォーミュラ ベイビーバード
(以下は袋の裏面の文章の和訳です。)
重要なのでお読みください!野鳥に与えないで下さい。もし野鳥のヒナを見つけたら保護する前に自治体の担当課または獣医師に連絡し助言を仰いで下さい。
■ 対象鳥種;小型インコ、ラブバード、オカメインコ、コニュア、白色オウム、コンゴウインコ、ボウシインコ、ヨウムなどのオウム目の幼鳥・スズメ目の幼鳥(※ブンチョウ・キンカチョウなど)
エグザクトハンドフィーディングフォーミュラは元祖「即席」粉餌で、最も良く研究され評判が良い製品の一つであり、プロブリーダーや獣医師、世界中の希少種保護計画に選ばれています。
■ エグザクトの特徴
・エグザクトの調整された高栄養の挿し餌(=フォーミュラ)はヒナの成長や巣立ち、換羽を助けます。
・適切に使用すれば、エグザクトシリーズはそのう食滞を起こしません。
・エグザクトハンドフィーディングフォーミュラには 鳥の消化機能を維持するプロバイオティクスが入っていおり、特に体内で活性が強い善玉菌が選ばれています。
・エグザクトハンドフィーディングフォーミュラは味や成分が成鳥用のエグザクトフードと共通しているため、離乳期のエグザクトペレットへの切り替えや エグザクトで飼育している親鳥のヒナの巣上げ時に腸内環境を保ちます。
■フォーミュラの作り方
・エグザクトハンドフィーディングフォーミュラを使用する前にこの説明書を全部読んでください。
・フォーミュラの配合はヒナの日齢により異なるので下記の表を参照してください。
きっちり正しい配合にするにはフォーミュラと水をはかりで量る必要がありますが、通常はスプーンでの計量で大丈夫です。
・ 溶かし方
日齢(日) 計量スプーン(杯) 重量パーセント(%)
孵化~2日 粉 1 湯 6 粉 8 湯 92
2~5日 1 2~3 16 ~ 20 80 ~ 84
5日以上 1 1と1/3~2 25 ~ 30 70 ~ 75
孵化後の二日間は水が電解質液(経口点滴剤)で代用されることもありますが、水で大丈夫です。
※ 表は溶かし方の配合であり 一日に必要な食餌量ではありません。
1.上の表に従って 清潔な容器の中でフォーミュラに約50℃のお湯を加えて下さい。
もし家の水道に雑菌がいるなら沸騰させてから使用するか 市販のペットボトルの水をお使い下さい(井戸水・湧き水なども沸騰させてから使用する)。
2.フォーミュラをダマが無くなる迄よく混ぜて 1分間置きます。
(※当院では 50~60℃の湯で15~30分湯煎しています。非常に滑らかになり 消化が良くなります。)
3.40℃(38~43℃)になるまで冷まします。すると全体が濃厚でなめらかなクリーム状になります。
もしもっと滑らかにしたければここで勢いよくかき混ぜて下さい。すると酵素が活性化し滑らかになります。
(※当院では 43℃になったら給餌用のシリンジで吸って与えています。鳥の体温は42℃程度のため 挿し餌で体が冷えないよう、体温に近い温度でフォーミュラをそのうに入れるようにしています。)
■ 作り方の注意
・重要; 一度作ったフォーミュラを再使用しないで下さい!余りは捨てて毎回新しく作り直しましょう。
・孵化から2日目まで~ フォーミュラは少ない量で作り、与える前にしっかりかき混ぜましょう。
この濃度では分離してしまいますが問題ありません。ふ化直後に必要なのは水と水溶性の栄養だけだからです。ヒナが生後2日を過ぎたら上記の表に従って固形分を増やして下さい。
・電子レンジにかけないで下さい。電子レンジで温めると温度ムラで高温の部分ができ そのうを火傷しやすくなります。もし温める必要があるなら フォーミュラ1/2カップに対し5秒以下で温めて その都度よく混ぜ、与える前に温度を再確認して下さい。電子レンジにかける時は水分の蒸発を防ぐためにフォーミュラを覆って下さい。そのうの火傷を防ぐためにフォーミュラをしっかり混ぜ、与える前には適温になっているか毎回確認してください。
■与え方
挿し餌は一定の間隔と量を決めて行います。
そのう内が空かほぼ空になってから次の餌を与え、与えた量がヒナに適正だったか判断していきます。
一定の間隔で挿し餌を行うことで そのう内に餌が長時間残って腐敗するのを防ぎます。
もしそのうが空になるまでの時間が急に長くなったら、そしてそのうが停滞しているように見えたら、
ヒナの様子を近くで観察していて下さい。そのう停滞については下記の「重要な注意事項」を参照して下さい。
1.清潔で汚染されていない注射器やスプーン、チューブ、または他の適した器具で与えて下さい。感染症の拡大を予防するために ヒナごとに給餌器具を交換して下さい。
2.ヒナが餌を欲しがる行動に合わせて給餌して下さい。ヒナがリズミカルに頭を振る動きに合わせて給餌することで 気道に誤嚥する危険性を減らします。
3.そのうが十分に丸く膨らむまで、またはヒナが欲しがらなくなるまで給餌して下さい。どちらかに該当したら給餌を終えて下さい。吐くほど大量に与えないで下さい。一般的には 一回の食餌量が体重の10~12%分となれば良いでしょう。
4.使った給餌器具を洗って消毒して下さい。給餌の度に敷材を掃除し こぼした餌を拭きましょう。飼育環境を清潔に保つことが幼鳥の健康を左右します。
エグザクトハンドフィーディングフォーミュラだけでヒナを育てることができます。もし他に果物や野菜や離乳食のようなものを加えるなら挿し餌の量の20%以下にして下さい。但しビタミンやミネラルのサプリメントは加えないで下さい(※ ビタミン過剰症を起こす可能性があるため。)
■ 一人餌への切り替え方
一人餌になるのを助けるため、餌探し行動が始まったらエグザクトのペレットを与えてみて下さい。幼鳥の羽が全体的に生えたら、清潔な餌皿にエグザクトナチュラル®、レインボー®を入れて与え、挿し餌も続けます。幼鳥はゆっくりと新しい餌を好むようになってきます。常に新鮮な水を与えて下さい。通常の巣立ち時期を過ぎてもハンドフィーディングフォーミュラを使ったり 過剰に給餌すると 健康に悪影響が出る可能性があります。(※ と言われていますが 痩せていたりなかなか離乳できない場合は受診の上 さし餌可です。肥満なのに離乳できない場合はご相談下さい。ヒナが大きくなってから挿し餌を与える場合も適温を守り 冷えた餌は与えないことが大切です。)ヒナが一人餌になってくると体重が10%減ります。ハンドフィーディングフォーミュラから一人餌の切り替えは 味と成分が共通のエグザクトの成鳥用の餌を与えると上手くいきます。
■ 挿し餌で育てる幼鳥の体調管理について
・症状が出る前に病気を察知するには 体重の増減を記録するのが一番です。
毎朝 挿し餌を与える前に体重を測りましょう。
・健康なヒナは一人餌が始まるまでは毎日体重が増えていきます。
体重増加が止まってそのままの場合、ヒナを頻繁に観察して下さい。
体重減少が見られる場合、何か問題がありますのですぐに原因を調べる必要があります。鳥を診れる獣医師に連絡し指示を仰ぎましょう。
・その他に 健康なのに体重が十分に増えないことがあります。それは栄養が足りていない場合です。例えばフォーミュラの濃度が薄すぎたり、他の食べ物(※アワ玉など)を加えてフォーミュラの量が少なくなっていたり、1回の挿し餌量が少なすぎることが考えられます。
■ 重要な注意事項
・餌の変更方法;エグザクトハンドフィーディングフォーミュラ以外の餌を使っていたヒナには いきなり変更するのではなく 1~2日かけて前の餌と半々に混ぜながら徐々に変更して下さい。それぞれの製品を別々に 用法通りに作って、それから一緒に混ぜます。段々エグザクトハンドフィーディングフォーミュラの割合を増やしてください。急にエグザクトハンドフィーディングフォーミュラに変更すると 食餌変更によるそのう食滞を起こします。予防のため、エグザクトハンドフィーディングだけを与え始める最初の数回は 用法より薄くして与えて下さい。
・そのう食滞;もし食滞が起こってしまったようなら まずは環境温度が適正か確認して下さい。ヒナのいる場所の温度が高すぎたり低すぎたりして食滞を起こすことが多いです。そしてフォーミュラを作ったら2~3倍に薄めて1日(24時間)与えて下さい。翌日は徐々に元の濃さに戻していきます。その間、そのうを優しくマッサージし 食塊を崩します。ただし、そのうの半分以上に餌が入っている時は絶対にマッサージしないで下さい。そのうが空の時に給餌して下さい。このやり方で消化管が安定し機能が復活します。濃い緑色の便が出た場合は、そのうから餌が一時的に降りて来なくなっていたことや消化管の中の餌が無くなっていたことを示します。濃い緑の便が出たのにそのうに餌が入っているなら、そのうがどれくらいの時間で空になるのかすぐに時間を計って調べて下さい。もし36時間以内に改善が無ければ 獣医師やブリーダーに相談することをお奨めします。
・1回の給餌で与える量は体重の15%までですが、この量を守っても吐き戻してしまう幼鳥がいます。与えすぎで吐く場合は給餌を休止し、ヒナについた餌を拭きとってから静かに休ませましょう。次の給餌では餌の量を減らして下さい。
■ 保管の仕方
袋の中の空気を抜いてしっかり封をして下さい。乾燥して涼しい場所に保管し、開封から30~45日以内に使い切って下さい。冷蔵または冷凍するともう少し長期保存できます(※解凍時に傷むため 繰り返し使用する場合は小分け冷凍して解凍分はすぐに使って下さい。傷んだ餌による食中毒が多いです。)
★(人への)アレルギー情報;この製品はピーナッツや木の実を加工する設備で作られています。
www.kaytee.com もご覧ください。
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☆ まとめ ☆
① 表に従い、清潔な容器の中で粉に約50℃のお湯を加えダマが無くなる迄よく混ぜて1分間置く。
(※ 50~60℃で15~30分湯煎すると非常に滑らかになります。)
② 40℃(38~43℃)になるまで冷まし、冷えないよう湯せんしながらヒナに与えます。
そのうの火傷防止のため 毎回温度も確認します。
③ 感染症が広がるのを防ぐため 給餌器はヒナごとに交換して下さい。
④ 一度作ったフォーミュラは再使用せず、毎回新しく作り直しましょう。
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以上です。文章の内容は訳注を除きケイティー社に著作権があります。
2019年に更新された内容であり 今後パッケージや製品ラインナップの変更に伴いマイナーチェンジがあるものと思われますので 最新の内容についてはお手元の製品をご覧いただければと思います。
この和訳が ヒナ鳥を育てる方のお役に立てれば幸いです。
但し 挿し餌ヒナを育てるのは慣れていないと難しい面があり、米国鳥類獣医師会(AAV)は挿し餌ヒナの販売はすべきでは無いという声明を出しています。日本国内では鳥類獣医師のまとまった見解はありませんが、個人的には、挿し餌が終わった幼鳥を購入して頂くことを様々な観点からお奨めしています。
2023.1.20 副院長 今西奈穂子